その他のニュース
自身の安全を守るために白杖を持ちましょう
外出自粛下での筋力維持
手引きとコロナ
単独歩行される皆様へ
手引きのされ方 1
手引きのされ方 2
他者にアシストを求める方法
2021年11月23日
今回は他者にアシストを求める手段として、ちょっとした話題をご紹介します。
1 白杖でSOSサイン
私はかなり視力の低い弱視で、10年くらい前から行き先によっては白杖を使っています。知らない土地や人混みでは自分の足元の安全だけでなく、他者に対しても視覚障害者の存在を知らせることで、更に安全を確保できると考えてのことです。
そんな白杖中途半端使用者の私は知りませんでした。白杖によるSOSサイン。これは身の危険のような緊急事態用ではなく、迷子になったとか、方向がわからなくなったなど、ちょっとしたアシストを周囲の人に求めるものです。やり方はその場に立ち止り、白杖の石突を下にして、持ち手が頭上50センチくらいになるように持ち上げます。あとは誰かが声をかけてくれるのを待つだけです。
これを実際にやってみた方はいらっしゃいますか。私は見たこともやったこともありませんでした。このサインを使った視覚障害者がいて、それをアシストした人のツイッターがネット上で話題になっています。すでに8万リツイートを超えているそうです。世の中の多くの人が「へー」って思うSOSサインって、どうでしょう。役に立つのでしょうか。
さて、この方法を知らなかった私が偉そうに言えたことではありませんが、これを機会に私たちが実際に使っていき、その姿を多くの人に見せていけば、誰もが知るSOSサインになっていくのではないでしょうか。いつのことになるかわからない長い話にはなりますが、積み重ねていかないといけないことの一つと思
います。
「ばえー」な写真を追求しなくても8万リツイート越えとは立派なものです。
2 By My Eyes(ビーマイアイズ)
これはアンドロイド・IOS用のアプリケーションで、視覚障害者が困った時
にビデオ通話をつかってアシスタントが会話しながら画像を説明してくれるもの
です。
例えば、目的地の建物には着いたのに入り口がわからない時、ビデオ通話の画像を見ながらアシスタントが行き先の指示をくれます。また、「このシャツにどの上着を着れば色合いがいいのか」などのコーディネートも、ビデオ通話でワードローブを見ながらアドバイスしてくれます。アシスタントは一般人で、特に何かの技能を持っているとは限らない、このアプリに登録している人たちです。ですから、専門的なことには対応できません。責任もありません。おそらく毎回違うアシスタントとつながります。
それでも、このアプリの最大の良さは「人が答えてくれる」ところです。画像を見ながら見たり読んだりしながら教えてくれるので、問題を絞った質問や確認もできます。自分が何に困っているのかをより正確に伝えられます。そして、なんと、無料です。
さて、私は実際にこのアプリに登録して使ってみることにしました。そしてびっくりしました。アプリの画面も説明書きも選択肢も全部英語。さっぱりわかりません。それでもがんばりました。間違えてアシスタントする側に登録したりし
ながらがんばりました。結果、登録できました。登録さえしてしまえば、アシストを求めるボタンを押すだけなので、あとは簡単です。自宅で特に困ったことはありませんでしたが、とりあえずアシストを求めてみました。1分ほど待って若い声の男性につながりました。心配しましたが、ちゃんと日本語でした。当方が
初体験であることを伝え、明日着る服を選んでもらいました。5分ちょっとの通話でしたが、丁寧に教えてもらいました。互いの自己紹介も世間話もなし、相手の顔も映りません。それがアシスタントの負担を軽くすることになるようです。
ちょっと世知辛い気もしますが、これがイマドキのアシストなのかもしれませんね。英語だったり、世知辛かったりはしますが、とても便利なツールだと思います。
今回はアナログとデジタルなアシストの話題でした。物事に一長一短は付き物ですが、まずは1回、2回と挑戦してみてはいかがでしょうか。
わたくし、コロナになりまして
2022年12月25日
私、昨日のクリスマスイブからコロナ感染による療養生活に入りました。
せっかくの体験ですので、コロナに感染するとどうなるのかをお伝えします。ただし、これは現在・富山市に住む私の場合ですので、○○市のルールや××か月後の状況は変わっているかましれません。あくまでも「参考」としてお読みください。
24日、職場の全員対象の簡易検査で陽性反応が出ました。症状は特にありませんでしたが、すぐに病院に行くように指示されました。病院に行って事情を伝えるとすぐに隔離された部屋に連れていかれました。これが発熱外来のようです。 (どこの病院でも対応してはいないので、街の小さな医院さんに行かれるのなら事前の確認が必要です。)
そこでPCR検査を受けました。まだ、この時点でコロナ感染確定ではありませんが、簡易検査をちゃんと受ければ精度はかなり高いそうです。熱などのかぜ症状があればこのときに対症療法のお薬を出してもらえます。また、症状が重かったり、自宅での療養生活に問題があったりする場合はここで相談に乗ってくれるそうです。その後、自宅に帰り、おとなしく過ごしていると翌25日の朝に病院から「コロナ陽性」の告げる電話がかかってきました。
さて、まずは簡易検査についてです。実は私、23日の夜、なんだか不調だなと思い、自宅にて自分で簡易検査をしてみました。この時は陰性でした。この検査は鼻の穴に細い綿棒を突っ込んでグリグリしてから薬液に着け、試験紙に垂らして反応を見るものです。手順は簡単で「拡大鏡を使えば墨字が読める」程度の視力があれば結果も確認できます。ただ、綿棒を鼻の穴のかなり奥まで突っ込まないといけないので、自分でやるとどうしても手加減してしまいます。その点、私の職場の看護師さんも病院の看護師さんも手馴れていますから情け容赦なく奥まで突っ込んでくれます。その違いがあったのかもしれないと今は思っています。
7日間の療養生活は以前にニュースなどで聴いていたものよりはかなり緩和されています。私はかなり視力の悪い弱視ですが、一人暮らしをしており、日常生活は自立していましたから入院は必要ありませんでした。また、スーパーやドラッグストアーが徒歩圏内にあり、買い出しにも行けます。生きていくには困りません。くわしくは富山県から出されている安心・安全情報と「自宅療養のしおり」をご覧ください。
https://www.pref.toyama.jp/120507/20220727kansen.html
ここからは少々脱線しますが、療養生活を迎えた私の思うところを2つ書いていきます。
まずは正確な情報の大切さです。「今」コロナ感染した私の頭の中にあった情報は「1波」や「2波」の頃のものもたくさん残っていました。つまり「今」では間違った情報も混ざっていました。大失敗はしませんでしたが、戸惑うことはありました。
以前に覚えた情報や人づてに聞いた情報は「今」では疑ってかかる必要があります。
テレビ・ラジオ・インターネットなどのメディアを全面的に信用できない昨今ではありますが、情報は常に更新していかなくてはいけません。
次にインターネットショッピングです。私がよく利用しているアマゾンでは今朝注文した物が明日には届いたりします。運送会社さんのご苦労も大きいのでしょうが、不意の療養生活でトイレットペーパーが切れかけている私にとってはとてもありがたいものです。また、電子書籍なら今買ってすぐにボイスオーバーに読ませることができ、退屈になる療養生活に潤いを与えてくれることでしょう。とても便利です。問題はクレジットカードの利用残高でしょうか。
最後になりますが、私は人様に感染させまくることもなく、自身が死にかけることもなく、恐怖も退屈もない、ちょっとだけ不便な療養生活に入ることができました。それでも感染しないのが一番です。感染対策に気を付ける一方で、元気なうちに療養生活のイメージを持って、必要な準備をしておかれることお勧めします。
弱視の関西万博
2025年10月15日
今回は先日終了した大阪・関西万博のお話です。特に弱視の自分から見た万博を4・5月(序盤)、6月(中盤)、10月(終盤)にわけて感想を書いてみます。
序盤をとにかく情報が少なかったため、どのパビリオンが面白いのかなんて全く分からないところからスタートでした。なので、マップを頭に入れること(特にトイレ)を中心に準備をしました。今思えばあのころは快適でした。まさに「並ばない万博」。来場者数は4万人程度でした。とにかく人がいない、スタッフさんとボランティアさんしかいない、白杖を持って30秒立ち止まると必ず声掛けされる、また、パビリオンでもスタッフさんが説明しながらついてきてくれるところもありました。コモンズ館では各国の担当者さんと楽しくお話しながら見学できました。
困ったこともありました。まずはデザイナーズトイレ。オシャレすぎて、使い方がわからない、男子トイレか女子トイレか、何処が空いているか、鍵の締め方、そもそもトイレかどうかわからない。また、歩いている時にも危険がありました。個人用モビリティーです。これは誰でも借りられて足の弱い人が会場内を移動する助けになる時速6キロまでしか出ない一人乗りの車です。足の弱くない人でも借りられるのでたくさん走り回っていました。免許もコースもルールもないので結構危ない。何度かひかれそうになりました。自分も借りに行ってみましたが、白杖を持った弱視には貸してくれませんでした。さらに、パビリオンでも困りごとはありました。近年「体験型」というものが流行っているようで、弱視には体験できないものが圧倒的に多い。電力館に行った時です。電気に関する様々な不思議を体験できるブースがたくさん並んでいました。何かを操作したら何かが起こって、それについての説明がされるブースを巡ります。何もわかりませんでした。つぎに住友館に行った時です。森の中で「怪しいところ」に配られたランタンを近付けると何かが起こって森林の大切さがわかる。ここでは「怪しいと
ころ」がわからないと先に進めなので、スタッフさんが連れて行って教えてくれましたが、何が起こったかがわからないので、森林の大切さもわかりませんでした。結論としてわかったのは「弱視に体験型はダメだ」でした。
中盤ではかなり情報が出そろい、デザイナーでないトイレの場所や体験型でないパビ
リオンがどこかもわかってきています。弱視の敵、個人用モビリティーも禁止になりました。どなたかが身を持って危険性を証明してくださったのかもしれません。序盤に散々歩き回っていますから土地勘もあります。人が多くなって「並ばない万博」ではなくなってきていましたが、普通のテーマパークのような感覚で動くことができました。来場者数は10万人程度でした。普通のテーマパークよりもスタッフさんやボランティアさんはたくさんいて、ホスピタリティーはしっかりしているように感じま
した。
ただ、1点だけ困ったことがありました。ドイツパビリオンのレストランに行った時です。メニューはテーブルに張ってあるQRコードをスマホで読み取ってネット上でのみ見られます。まずここで躓きます。その後、オーダーしようとするとスタッフさんはすべて金髪(外国人)です。弱視は会話できない相手とは途端にコミュニケーションができなくなることがわかりました。スピードラーニングを始めることを決意しました。
終盤では情報が出そろっていて、自身の経験も積みあがっています。どこに何があるかも完全に頭に入っています。人はものすごく多かったですが、弱視ゆえの困りごとはほとんどありませんでした。来場者数は20万人程度でした。行きたいパビリオンはすでに制覇済みで何時間も並ぶ必要もありませんから、お祭り見物のような感覚です。気楽に楽しむことができました。
人が多いゆえの面白いことがありました。人気パビリオンやレストランは長蛇の列で、最後尾がどこか、この列は何の列かもわからなくなっています。何の列でもない行列ができていたくらいです。そのため行列も制限されて、並ばせてもらえなくなっていました。ついに「並ばない万博」は「並べない万博」になっていました。
そんなこんなで大阪・関西万博は弱視でも充分な準備と工夫をすることで楽しむことができました。普段から感じていることですが、弱視は何をするにしても準備と工夫が大切なことを再認識しました。あとはスピードラーニングでしょうか。
